良しも悪しも共に照らすは夏の月明かり
- 2012.08.19 Sunday
- 08:50
今朝、いつもの様に相模川で気功法をしていた
今日の場所は鯉が優雅にたくさん泳いでいる入江の前
大きな鯉を眺めていると二十五年前に
タイムスリップしてしまった
尊敬していた石井翁の邸宅
三十代中盤の私は悩みが深くなると
この場所を訪ねた
大きな門をくぐると
目の前に日本庭園が広がる
白い石畳に足を踏み入れると
池の方から声がする
「若いの来たな」
優しい声が灯篭の脇から聞こえる
浴衣を着た翁は恋に餌を与えていた
目線は池に向けたまま
「よく来たな」
私も翁の隣に座り恋を眺めていた
ゆっくりゆっくり鯉は漂っている
餌が投げられた瞬間だけ激しく動く
そして何もなかった様に漂う
「一句浮かんだぞ」
翁は続ける
「良しも悪しも共に照らすは夏の月明かり」
私の顔を満面笑顔で見つめた
「夏の河原には葦(アシ)がたくさん茂る
葦(アシ)を(ヨシ)ともいう
良し悪しを共に照らす様になることが
必要な時期に来たな
良し悪しの分別がついたら
次は共に照らすのじゃ」
感動で涙が溢れた
何も語らず
見つめることもなく
隣にいる私の心が読み取れている
ピッタリのお言葉をいただいた
「清濁併せ呑む
水清ければ魚棲まず
言葉はたくさんある
実際その様に生きるのが難しい」
学術的でも評論的でもない
実践者の言葉には重みと説得力がある
翁の様になりたい
心からそう思った
鯉のしなやかな背中
無欲の自然体
ぼーっとしながらも気配をうかがう
獲物をとる生命力
鋭い瞬発力で身を守る
鯉と対話して学ぶ
翁の背中を追いかけ続ける